―最終回 今後の展望―

――プロジェクトを進める中で性格以外にも分かったことがあるのでしょうか。

遺伝子解析で分かってきたこと

佐藤少しずつではありますが、解析結果が出てまいりました。性格面で言いますと、神経質な傾向があったようです。

手塚まさしくその通りで、体はとても元気といいますか、丈夫だったとみんな言っていますね。だから、単純にエネルギーを出し切ってしまった、自分の体以上の仕事をしてしまったということだと思います。

――プロジェクトではどこまでわかるのでしょう。

手塚そうですね。まだまだこれからわかってくることも、たくさんあるんじゃないかと期待しています。なにしろ遺伝子の世界ってもっと広いと思うから。私たちがまだ知らないこともたくさんあると思いますし、年々新しいことがわかっていくでしょう。そのたびに手塚治虫は実は、こうだったというのがわかっていくのは、非常にどきどきすることです。

――遺伝子検査は社会にどのような貢献をしていくのでしょうか。

佐藤従来の西洋医学というのは万人向けだと思うのですが、遺伝子でパーソナライズ、個人化ができれば一人ひとりに合った予防なり医療が提供できると思います。当社は、2020年までに国と足踏みをそろえまして「健康寿命を1歳伸ばす」、2050年までには「健康寿命を5歳伸ばす」という目標を掲げています。病気の遺伝子というのは、病気の診断だけではなく、ゲノム創薬と言われる領域もあります。当社の目標としては2030年までに日本の遺伝病の患者さんを50%削減したい。将来的には健康寿命を伸ばし、しかもそういう遺伝病を治すことによって医療費の削減、というところを目指しています。

手塚普通、遺伝情報というと、病気のことであるとか体のことと思ってしまうんですけれども、先ほどからお話に出ている通りで、その人の性格であるとか生き方といったところも、これだけわかってくるんですね。そうすると、どういう生き方をするとその人にとってベストかということも、自分なりにいろいろ計画を立てることもできるんじゃないかなと。生き方、働き方、住み方といいますか、生活全般のところまで踏み込んでヒントになることがたくさん出てきますね。普通、人間って、自分のことが一番わからないっていうじゃないですか。だから周りの人に聞いたり、場合によってはそういうお医者さんであったり、カウンセラーであったり、人によっては占い師であったりに、アドバイスを求めるわけですよね。でもこの遺伝子検査によって、これからは自分自身にアドバイスしてもらうっていう、そんな時代なのかなという気がするんですね。自分のことは自分が一番よく知っている、だけど自分で気づいていない、それを教えてもらえるというところでは、すごくこれからの社会をつくっていく大事なコアになるような気がします。まだまだこれから、それが具体的にどうなっていくというのは今後の発展によると思うんですけれど、なんかそのヒントがこれで見つかったなという気がしますね。まさに手塚治虫が最後に着目していたのが遺伝子であるというのは、ここからわれわれの未来が見えてくるんだなというような気がします。

――本当にこれだけ人間性があぶり出されるというのは驚きです。

佐藤当社もここまでもっていける技術を構築するのに10年かかっています。最初は機械も技術も今のレベルには到達しておらず、10年たってようやくここまで解読ができるようになったというところですので、これからの10年20年はさらにスピードが加速していくと思います。それがすごく楽しみですし、今まで治せなかった病気へのアプローチですとか、明るい未来が見えてくるんじゃないかなと思いますね。

今後の展望

――御社の今後の展望を。

佐藤やはり遺伝子検査が正しい形で国民に理解され、それが医療と民間の両方で予防から診断、治療という形で根付くということが希望です。我々は、この分野で長く実践していますので、社会的な責任として感じていますよね。

――手塚先生には、期待されることを。

手塚今回はね、手塚治虫の作品のなかでも『火の鳥』のキャラクターを選んで使っていただいて、火の鳥が示しているのはまさに「人間の体のなかに宇宙がある」、ここにすべてがあるんだということを示している作品なんですね。そのシンボルの通りで、われわれは遺伝子を手に入れるというと変ですが、遺伝子情報を手に入れることによって、これからの人間の世界、それから宇宙をまさしく築いていくんだろうなと。おおげさではなくて、そういうふうに感じています。そこにいたるまでには研究がやはり必要だったと思いますし、やっと今年、遺伝子検査の第一歩が始まったのかなというような気がしますね。これから、これがどんな世界が広がっていくのかというのは、すごく期待もできますし、全部自分たちに関わることですから、楽しみにしています。

佐藤遺伝情報というのは、個人の究極の個人情報です。そういう意味で今後はその情報の重大さも理解しながら、一人ひとりが有効に活用していただければなと、そういうところにもっていきたいですね。

――今回は、まさに必然の出会いだったのですね。

佐藤そうですね。運命とご縁があったのではないかと思います。最初は本当にコマーシャルのディレクター、プロデューサーとしてというお話だったところ、偶然にもお父様のベレー帽のお話をいただいて。ただ私2,3キロやせました。

手塚面白いプロジェクトだと思いますよ。まだまだこれからだと思うんです。今回のプロジェクトは、今後絶対プラスになると思います。

佐藤こういう機会をいただいて感謝していますし、本当に光栄です。

――わかりました。今日はどうもありがとうございました。

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