解析秘話

解析秘話vol.1

どこからDNAを抽出するか

「手塚治虫遺伝子解析プロジェクト」は、手塚治虫先生のご子息である手塚眞さんのふとしたアイディア、「手塚治虫自身の遺伝子を解析したら、どんなことが分かるのだろう」という疑問から始まりました。

まず、遺伝子を解析するためにはDNAを抽出する必要があります。DNAの抽出は、口腔粘膜や血液から抽出する方法が一般的ですが、もちろんのこと手塚治虫先生の口腔粘膜や血液を採取することは不可能です。 私達のミッションは、「DNAの量・質に大きな制限がある中で、最大の情報を得る方法を考える」ことでした。 そこで、私達はいくつかの方法を検討しました。手塚眞さんから、お借り出来る手塚治虫先生の遺品として、ベレー帽や櫛、眼鏡などがあり、櫛に付着した髪やフケから採取することも検討しましたが、本人ではなくまったく関係のない人の髪の毛を採取してしまうリスクがありました。これら遺品の中で最もDNAが抽出できる可能性が高いと考えられたのが、手塚治虫先生が愛用していたベレー帽に残っていた遺髪だったのです。

私達は、繊維に絡まった遺髪をピンセットで1本ずつ丁寧に取り出すことから始めました。勿論、研究員の髪が混入しない様にキャップや白衣、手袋やマスクを身に着けて、細心の注意を払いました。また、顕微鏡で髪の毛1本ずつ観察し、繊維との区別や毛根の有無を確認しました。気が遠くなるような作業から採取できた遺髪は、非常に細く、短い髪の毛でした。本数にして160本。解析を行うため十分な量なのかは分かりません。さらに、手塚治虫先生がこの世を去ってから既に26年経過しており、DNAが抽出出来るだけの品質を保っているかどうか、この時点では研究員にも分からない状況だったのです。

次回は、この160本という限られた毛髪から、どのようにしてDNAを抽出していったのかをご紹介いたします。
お楽しみに。

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